監督:篠原哲雄
出演:若林しほ、小市慢太郎、堺雅人
製作年:2000年 上映時間:79分
● ストーリー
自殺が相次ぐ団地に住む主婦
スミレ(若林しほ)の家に刑事の
吉岡(小市慢太郎)が
やってきた。駅やホームセンター
爆発事件の犯人がどうやらスミレの
マンションに潜伏しているらしいのだ。
張り込みにはスミレの部屋が最適だと言う。警察手帳を見せられ
仕方なく部屋に通したが、強引で無神経な上
とても張り込みをしているように見えない吉岡の態度に
不快感と不安が増大するスミレ。
夜になっても帰る気配のない吉岡は24時間体制で
見張らなければならないと言う。
吉岡を放置したまま家を出る訳にもいかず
スミレは吉岡を泊める事になったが
寝室まで侵入して赤外線ビデオを回す有様だ。
しかし、スミレが何より不快なのは
団地で起こった或る事件の話題を頻繁に振ってくる事だった。
1年前、英会話教材のセールスマン・荒川(堺雅人)が
マンションから飛び降り自殺をした一件である。
吉岡を不審に思ったスミレは彼を誘き出し、ベランダに閉じ込めた間に
管轄の警察署に問い合わせたが、吉岡という刑事はいなかった。
しかし、1年前に吉岡はこの事件で鑑識を勤めた男で
不可解な荒川の自殺に疑問を持っていた
● レビュー
「張り込み」を見ようと思った切っ掛けは或る雑誌だった。
昔の演劇雑誌に載っている堺さんはよく知っているが
最近の雑誌になると殆ど読んだ事がなく
SNSで知り合った方に教えて頂いては雑誌をお取り寄せ。
その中の1冊がT. 2009 WINTER No.8という雑誌だった。
20000字インタビューの話題の1つに出てきたのが
映画「張り込み」である。
堺さんが小市慢太郎さんの事を「うまい」と褒めていたこと
堺さん扮する荒川は人間のイヤらしさが滲み出た役だということ
これらを読まなかったら「張り込み」を見る機会はなかったかもしれない。
小市さんが在籍した
劇団M.O.P.(2010年解散)
の公演を何度か見た事があり、その巧さは知っていたからだ。
小市さん演じる吉岡はぎらつく欲望を
むき出しにしてスミレに向かってくる。
その様は見ていて息苦しくなる程だ。
荒川は
写真の麗しく儚げな様子と打って変わり
男性として最低、まさに女性の敵である。
最初、「張り込み」というタイトルから想像して堺さんと小市さんが
刑事だと思い込んで見ていたら、あにはからんや。
驚くなかれ、人妻(スミレ)と不倫するセールスマンの役だった。
まず驚いたのは誘惑に乗ってやって来た
荒川とスミレの激しい
シーン。
荒川はスミレの
を鷲づかみに
刑事物だと思って見始めたのに
こんな衝撃シーンを見る事になろうとは思わなかった。
見終わった後で調べたら「張り込み」は6人の監督がデジカメを使用し
低予算で撮る「ラブシネマ」の第4弾作品。
共通テーマは「ラブとエロス」だったそうな。
スミレが登場した時、妙な色気があると思ったが
映画の意図を知って納得した。
閑話休題。
逢引を執拗に迫るスミレに嫌気が差した荒川は別れ話を切り出す。
スミレから妊娠を告げられた荒川が用意した物は
手切れ金と妊娠中の我が妻。
ところが妻と思った女性も荒川と関係がある人妻だった。
荒川はここまで小狡いとは呆れるやら、驚くやら。
爽やかな風貌の裏に隠された人間の汚さがよく出ていた。
堺さんはオーディションでこの役を得たとか。
出番は多くないが、インパクト大。一見の価値はあると思う。